airbleu昨年のデビューから一年半足らずで、早くも6作目の登場である。クラシックとポピュラーを見事に吹き分けて見せた昨年とは打って変わって、フルート奏者としての本来の分野に全力投球した作品が続いているが、ここではついにフルート1本でどれだけ多彩な音世界が描けるかに挑戦している。これは、私が昨年彼女のリサイタルを聞いてから切望していたことであり、私の過剰な期待を裏切らない作品の登場は本当に嬉しい。

冒頭から10分の大作である。映画「めぐり逢う朝」(1991)でジェラール・ドパルデューが演じていた17世紀の宮廷楽士マラン・マレの作品だそうだ。 以下、クラシックには詳しくない私にとっては、見覚えのある作曲家の馴染みのない曲が続くが、予備知識無しに聞き流しているだけでも十分心地良い。目を閉じて聞き入ると、意識したわけではないのに、精神統一を図ったかのように、気持ちがシャキッと引き締まる。

いや、1曲だけ既にCDで持っている曲があった。アルバム・タイトル曲ともいえる故・武満 徹の“AIR”だ。大手レコード会社の会員制通販システムが独自編纂した追悼アルバムだったが、その中ではとても地味な印象だったので、ほとんど忘れかけていた。

さて、本作は9月に発売されたのだが、それを知ったのは10月に入ってからだった。ようやく買ったのが11月初めということで、相次ぐコンサート評のため今頃になってしまった。各地でリサイタルを開いているようだが、インストア・イベントすら逃してしまい、このCDを聞くたびに悔やまれる。