Kutche
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posted with amazlet at 17.05.08
Cheb Khaled Safy Boutella
Stern's (1994-03-08)
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1980年代後半に起きたワールド・ミュージック・ブームは、ヨーロッパの忘れられていた地域音楽やアフリカ・南アメリカの伝統音楽を、極東の地=日本にまで届けてくれました。しかし、現在ではその多くはインターネット通販でも入手が難しくなってしまったようです。そんな中、今年になって日本のマイナー・レーベル=ライス・レコードが1枚のCDを再発しました。シェブ・ハレド「クッシェ」です。

このアルバムも、ご多分に漏れず、当時のワールド・ミュージックのメッカ=フランスから世界に発信されたアフリカ産の音楽のひとつです。とは言っても、実はアルジェリア産のBLUES=「ライ」という音楽がどういうものなのか、全く理解していません。それどころか、当時はワールド・ミュージックのブームとは若干距離をおいていたほどです。そんな私も、この作品には一聴して魅せられてしまいました。

何と言っても、発表当初から「世界最強のコブシ」と絶賛されたハレドの歌唱は、圧倒的な浸透力をもって心の奥底まで響いてくるインパクトがあります。先に紹介した元ちとせ 郭 英男 のような歌い方に抵抗がない人なら、すんなり受け入れられる音楽だと思います。

もちろん、ワールド・ミュージックとして注目されただけあって、サウンド・プロダクションは西洋文明の恩恵にドップリと漬かっています。サウンド面・・・・というか、楽曲面で大いに貢献しているのが、同じアルジェリア出身のジャズ・ベーシスト=サフィ・ブーティラです。そして、サウンド面で無視してはならない人物がもう一人=フランス人プロデューサーのマルタン・メソニエです。

メソニエは、ナイジェリアのキング・サニー・アデやザイールのパパ・ウェンバなど、既に多くのアフリカのアーティストの作品に関わってきた人だそうです。電気楽器がアルジェリアに持ち込まれたことで生まれた近代的なアラビア歌謡「ライ」を、当時の最新技術と手法でコンテンポラリーな西洋音楽と肩を並べるレベルに引き上げた功労者というわけです。

この作品から10年後に登場した台湾の郭 英男 のデビュー・アルバム “Circle of Life” は、基本的にはこの手法を踏襲した作品だと思います。しかし、余りにもエレクトロニクスの面が進み過ぎて、演奏面でのプリミティブさ(エスニックさ)が薄れてしまったように聞こえます。しかし、それはハレドの作品を基準に比較した場合の印象であって、コチラの作品でプロデューサーのダン・ラックスマンが意図したこととは次元の異なる話で、無意味な比較ですね。(^^ゞ

シェブ・ハレドは、その後「ハレド」と改名して、今なお音楽活動を行っているそうです。しかし、どうやら本作を超えるものは生み出せていないようです。ひょっとすると、本作は「ライ」というカテゴリーの中では多分に欧米音楽寄りな作品で、本来の「ライ」からは多少かけ離れているのかもしれません。

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