Quid Pro Quo / Kasim Sulton (2002)アメリカでの発売が2002年9月4日で、当初メジャーな通販サイトでは取り扱っていなかったCDを、ようやくGETしました。発売元のSphere Sound Recordsでは「限定生産」なんて宣伝していて、そのうち「売り切れ」扱いになってしまいましたが、どうやらメーカー在庫が捌けてしまっただけのようです。

ところが、最近amazon.comに続いてamazon.co.jpでも取り扱うようになり、今月初めにチョット円高になったので、今がチャンスとばかりにクリックしてしまいました。同時購入が“Liars”のUS盤という、分る人には分る因縁の組合せでした(笑)。

どういうことかといえば、Kasim Sultonは現在Todd Rundgrenの“Liars”ツアーにも同行している元Utopia のメンバーだからです。Utopia解散後はセッション・ベーシストとして様々なアーティストのレコーディングやツアーに参加し、Joan Jett、Patti Smyth、Daryl Hall & John Oates、Meatloaf、ちょっと変ったところでは矢野顕子がJeff Bovaと組んだユニット“The Hammonds”で来日したこともあります。

その彼が今から1年半以上も前にリリースした、ソロ名義では2枚目に当るアルバムが本作です。童顔の甘いマスクもそれなりに老け込んできましたが、ルックスから受ける印象通りのマイルド・ボイスは未だ健在です。ボーカルが少し野太くなった分、むしろ安定感が増していて、A級Pop Rockとして十分楽しめると思います。でも、国内盤は・・・・永久に出ないだろうなぁ~。




全10曲中8曲が(共作を含む)自作曲です。Utopiaを髣髴とさせるものからDoo-Wap調のナンバーまで、Pop Rockの範疇にありながらも多彩な楽曲が並んでいて、改めてソングライティングの才能に感心させられました。Utopiaがアルバムを重ねるに連れ、急速にプログレ色が薄まり、どんどんポップ色が濃くなっていったのは、案外Kasim Sultonの貢献によるところが大きかったのかもしれません。

共作曲にもチョット驚きました。当時STYXのメンバーだったGlen Burtnikとの共作だったからです。意外な組合せに感じたのですが、Glen Burtnikのソロ・アルバムに参加したことがあるそうです。でも、どういう経緯だったんでしょうネ?

もっと驚いたのは2曲のカバー。5曲目の方は、Split Enz、Crowded Houseでの活動が懐かしいTimとNeilのFinn兄弟の曲です。1995年にイギリスで(アメリカではその翌年)リリースされた兄弟名義による初アルバム“Finn”に収録されています。

もう1曲が9曲目で、Harry Nilssonの作品です。私の持っている彼のベスト盤には収録されてません。てなわけで、実はどっちもオリジナルを聞いたことがないという、渋くてニクイ選曲です(笑)。

その上、ほとんど全ての演奏も自分でやっています。それでいてバンド演奏のような躍動感があり、とてもポジティブな気分になります。 今の時代、打ち込みを多用すれば何とかなるものでしょうが、ほとんど使っていない感じです。

しかも、1曲だけギターの弾き語りだけでライブ・レコーディングした曲があって、ライブ・パフォーマーとしての力量もさりげなく見せ付けてくれます。こうなるとヤッパリ欲しくなるのが、EMI-Americaから1982年に発売されたファースト。これもCD化されることを切望して止みません。